米国で急成長中のヘルシー・ファーストカジュアル「CAVA」


米国Health&Beauty事情レポート①

健康と満足感を同時に満たすギリシャ料理が若い世代に支持される

 近年のアメリカ外食シーンを語る上で、必ず名前が挙がる存在があります。それがCAVA(カバ)です。
 CAVAは2006年、ワシントンD.C.にて「CAVA Mezze(カバ・メッゼ)」という地中海料理のフルサービスレストランとしてスタートしました。創業者は3人のギリシャ系アメリカ人です。彼らが幼少期から親しんできたギリシャの家庭料理を、現代的かつカジュアルな形で提供したいという思いが起業の原点でした。
 数年前から米国では、大学・医療機関・ヘルスケア系メディアを中心にMediterranean Diet(メディテレーニアン・ダイエット:地中海食)が注目されています。心臓病リスクの低下や生活習慣病予防に効果的であるとして、繰り返し推奨されてきました。その中核に位置付けられているのがギリシャ料理です。

 ギリシャ料理の特徴は、
・オリーブオイルを主とした脂質
・野菜・豆類・ヨーグルトを多用
・魚介類や鶏肉中心のたんぱく源
・揚げ物が少ない調理法
といった点にあります。

 「重くないが、しっかり満足感がある」という食後感は、肥満や健康への不安を抱えながらも外食をやめられないアメリカの消費者心理と極めて相性が良いのです。
 また、同じ地中海料理圏に属するトルコ料理やイスラエル料理と比べても、ギリシャ料理は「彩りが鮮やかで写真映えしやすく、西欧的で親しみやすい」というイメージを持ちます。そのため「食べる体験」だけでなく、SNSでの共有を前提とした消費行動を重視する若年層にも強く支持され、CAVAの成長を後押ししているのです。
 CAVAは、穀物や野菜をベースに、プロテイン、トッピング、最大3種のディップやヨーグルトソースを目の前で選べる高いカスタマイズ性が特徴です。選択が面倒な顧客向けには、店舗おすすめの定番メニューも用意されています。
 自己表現を重視するZ世代・ミレニアル世代にとって、食の嗜好やライフスタイル、価値観を自然に反映できるこの仕組みは強い支持を獲得しています。さらに、彩り豊かな盛り付けはSNSとの親和性が高く、利用者投稿による自然な拡散を生みました。
 洗練された店舗デザインと「きちんとした食事」という印象も、外食時の罪悪感を和らげ、日常使いの選択肢として定着した要因です。総じてCAVAは、「健康」「満足感」「自己表現」「視覚性」「デジタル体験」を統合した外食モデルとして、若い世代が自然に受け入れるブランドへと成長しています。

美味しくて身体にも良いという強みは、現代の「理想の外食」

 数年前、私にCAVAの存在を教えてくれたのは、1995年生まれの息子でした。
「とにかく美味しくて、しかもヘルシー。これから絶対に大ヒットするチェーンだから、一度食べてみてほしい」
 そう言って、印象的な黄色い袋に入ったテイクアウトを持ち帰ってくれたのです。蓋を開けると、まず目に飛び込んできたのは彩りの美しさでした。
 そして何より驚かされたのが、焼きナスのペースト状ディップです。これをチキンにつけて口に運んだ瞬間、これまでに味わったことのない、まろやかで奥行きのある風味に思わず感嘆しました。それ以来、ナスのディップは必ず注文する定番となりました。
 ギリシャ料理は、塩・酢・オリーブオイルを基本としたシンプルな味付けで、全体的にマイルドかつ調整しやすい点が特徴です。そのため「週に2〜3回でも食べられる」と感じる消費者も多く、日常使いとの親和性が高い料理ジャンルと言えます。
 CAVAが提供するメニューは、「美味しい」だけでなく、「身体に良い」と説明できる料理である点が大きな強みです。健康志向、満足感、手軽さ、罪悪感の少なさ——現在の米国社会が外食に求める条件を高い次元で満たす、ヘルシー・ファーストカジュアルダイニングと言えるでしょう。
2023年の上場以降、CAVAは出店ペースを加速させ、米国外食市場における“ヘルシー・ファーストカジュアル”の代表格として存在感を高めています。健康志向と満足感を両立させる業態は、今後の外食投資モデルの一つの方向性を示しています。



expert五十嵐 ゆう子(いがらし・ゆうこ)
米国健康・美容業界のコンサルタント/リサーチャー。美容・健康産業に関する通訳・コーディネーション業務、流通リサーチを担当。美容・健康業界紙「DIET&BEAUTY」などで長年米国トレンド事情のコラムを執筆。グロサリー業、小売流通コンサルティング、健康食品関連リサーチや講義講師等も担当している。