「新しい」は人の数だけ~シックスセンシズ 京都のウェルネス現場から~

訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加とともに、日本のラグジュアリーホテルにおけるスパ・ウェルネス施設の役割は、大きく変化してきました。シックスセンシズ 京都は、ブランドのコアバリューに「先進的なウェルネス」を掲げており、日本においてそうした変化の最前線に立つ施設の一つだと自負しています。

1995年に誕生し、世界に25以上の拠点を持つシックスセンシズは、「ウェルネス」をブランドの中核に置いてきました。スパだけに留まらず、滞在そのものや食事が心身の回復へ寄与するという思想は、どの場所でも一貫しています。しかし多くの海外にあるシックスセンシズと異なり、アーバンリトリートである京都では、ユニークな現象があります。
それは、国内ゲストとインバウンドゲストが、異なる目的を持ってこの場所に訪れていることです。そして目的こそ異なりますが、その先をたどっていくと、ひとつの共通点に行き着きます。人は誰でも、「新しい体験」と「発見の喜び」を求めます。違うのは 「何がその人にとって新しいか」です。


国内ゲストは「知っている」からこそ、「知らない」を求める
ウェルネス施設自体は、日本では決して目新しいものではありません。温泉文化が根づくこの国では、身体を癒す行為への親しみは深く、フェイシャルやボディトリートメントといっ
た従来型のメニューへの理解度は高く、品質への目も肥えています。
だからこそ、シックスセンシズ 京都を訪れる国内ゲストが求めるのは、その延長線上にないものです。顕著なのは、水中でのボディワーク「WATSU(ワッツ)」への関心の高さや、スピリチュアルなプログラムの需要です。温水の中でセラピストが身体を支えながら、ゆっくりとストレッチや呼吸の誘導を行うワッツは、身体へのアプローチであると同時に、深いリラクゼーションと感情の解放をもたらします。重力から解放され、水に委ねられた感覚は、既存のスパ体験の延長線上にないものとして、国内ゲストの心に新鮮に響いています。
また、スピリチュアルウェルネスに働きかけるプログラムへの需要も際立っています。「整える」という概念が身体から精神へと拡張されつつある現代において、シックスセンシズへの信頼が、普段の生活では踏み込まない領域への扉を開く安心感を生んでいるのではないでしょうか。多くの国内ゲストにとって、シックスセンシズ 京都は「非日常のウェルネス実験室」として機能しています。

インバウンドゲスト─ブランドの普遍性と、京都の固有性
海外からのゲストにも、ユニークな体験を求める傾向は共通しています。世界各地のシックスセンシズでその哲学に触れてきたリピーターも多く、ブランドへの期待値も高い傾向があります。
しかし、インバウンドゲストにはもう一つの層があります。「日本らしさ」「京都らしさ」への深い希求です。その象徴が、禅のコンセプトを取り入れた「阿吽(あうん)」メニューへの関心です。始まりと終わり、呼吸と沈黙。対極にあるものの調和を意味するこの言葉は、説明より先に感覚的に受け入れられています。「禅」「間(ま・あわい)」など、目に見えない日本の精神文化に触れることを旅の目的の一部とされる方にとって、この体験が深く響いています。
彼らにとって、京都は単なる観光地ではありません。古来の精神文化が現在進行形で生き続ける場所であり、シックスセンシズ 京都のウェルネスは、その文化への入口となっています。

日常と非日常が逆転する場所
こうした違いは、ほかの場面でも見受けられます。バイオハックも好例で、赤色LED フェイスマスクやPEMF マットなど、身体の回復力を科学的に高めるこのアプローチは、米国などのゲストにとっては自宅ルーティンの延長に近いもの。旅先でもウェルネス習慣を続けたいという、ごく自然な動機で予約されます。ところが日本のゲストの反応は異なります。
「面白い!」「試してみたい!」と、新しい出会いに目が輝くのです。国内ではまだ認知度が高くないからこそ、知的好奇心に火がつくのでしょう。その逆が、日本式の入浴です。温浴施設とサウナは、国内ゲストには「ちゃんと設備があって良い」と好評をいただきます。それはどこか「確認」に近い印象です。日本に生まれ育った方にとって、湯船に浸かることは日常生活の一部だからです。一方、海外のゲスト、特に初めて来日される方にとって、大きな浴場、しかも水着なしで入るという体験に、最初は戸惑います。しかし一度体験すると、熱い湯船、冷たい水風呂、サウナ……この循環がもたらす新しい感覚は、深く身体に刻まれていきます。
以前、欧米からのヨガリトリートのグループの方々も、最初こそ戸惑いがありましたが、やがて毎日のように温浴施設へ通っていました。「きもちいいね」—その言葉と一緒に、生き生きとした表情を見て、日本の入浴文化が持つ力を、改めて教えてもらった瞬間でした。

ウェルネスの「新しい扉」を開く
普段の自分では選ばない体験を求める国内ゲストと、この場所でしか得られない文化的深度を求めるインバウンドゲスト—そう書いてきましたが、実はシックスセンシズ スパ 京都に「日本人向け」「外国人向け」という壁はありません。
本質は、ただひとつ。本物のウェルネス体験です。
健やかに生きていきたいという想いは、国籍や文化、性別に関係なく、いつの時代も変わらない普遍的なテーマです。入口こそ異なるものの、新しい扉を開けた先の 「非日常」で辿り着く場所はみな、どこかで必ず重なっています。
その思想を体現するような新しいフェイシャルを二つ、この夏に発表予定です。一つは、日本の筆「刷毛(はけ)」を用いたフェイシャル。物理的なクレンズと同時に水の音による心の清めを目指す、日本の精神文化に根ざしたメニューです。もう一つは、日本の伝統文化へのオマージュを取り入れた、石膏パックを用いるコントアリング・フェイシャル。石膏マスクはかつてエステティックで流行しましたが、いま改めて出会うことで、日本のゲストにも海外のゲストにも「懐かしいようで、新しい」発見になります。どちらも 「誰のため」という壁はありません。

本質だけが、時代を越える
情報があふれる現代に生きる私たちにとって、もはや「もの」だけで日本らしさを演出したり、ブランド名や新しさだけで人を惹きつけようとしても、やがて限界が来ると日々感じます。形だけを整えたところで、既視感とコモディティ化という時代の波を乗り越えることはできない。人はみな、どこかで本質的なものを求めます。その傾向は、物質的に満たされる富裕層になるほど強くなります。
だからこそ、「もの」にも「ブランドネーム」にも頼りすぎない、本当の体験を提供することが大切だと考えています。そうすることで初めて、国籍も文化的背景も関係ない本質的なウェルネス体験が生まれます。シックスセンシズ 京都が日々の現場で積み重ねているのは、まさにその実践の記録です。
ウェルネスとは 「自分について、まだ知らなかった何かを知る喜びである」ということを、シックスセンシズ 京都での毎日が教えてくれます。

■シックスセンシズ 京都について:
2024年に開業、京都・東山という歴史地区の中心部に佇むシックスセンシズ 京都は、総合的なウェルネス、サステナビリティ、そして非日常の体験を融合させた、都会にありながらも心安らぐ自然派ラグジュアリーホテルです。ホテルのデザインは、日本独自の芸術文化がもっとも花開いた平安時代にインスピレーションを得ており、81室の客室とスイートにもモダンで遊び心あふれるタッチとともに、雅な物語が広がっています。シックスセンシズ スパは禅の哲学と現代科学を調和させ、シーズナルダイニング「 Sekki(気)」は日本古来の暦に基づき、環境に配慮した料理を提供します。アースラボとアルケミーバーは本格的でインタラクティブな体験を特徴としており、古都・京都でつながりと再生の旅へとゲストを導きます。



expert福田 絢子(ふくだ・あやこ)
伝統的な東洋医学に深く魅了され、鍼灸の修士号を取得。15年以上のホリスティック・ウェルネスの経験を経て、シックスセンシズ 京都の開業時からウェルネスディレクターとして活躍している。その情熱は、東洋哲学の知恵と現代技術のギャップを巧みに埋めることにあり、身体、心、そして精神を育む変革的な体験を提供。