ホテルアメニティの役割が変わり始めている。株式会社ポーラは2026年9月、ホテルアメニティブランド「アロマエッセ」を刷新し、新ブランド「アロマエッセ リチュアル」を発売する。シャンプーやコンディショナーなどのインバス商品に加え、ピローミストやスリーピングマスクを展開し、「おやすみ前のやすらぎの休息体験」をコンセプトに据えたブランドである。今回のリニューアルで注目したいのは、単に商品刷新ではなく、ホテルアメニティを「備品」ではなく、「滞在体験を構成する要素」として位置づけ直した点にある。
宿泊者の休息時間全体をサポートする構成
近年、ウェルネスツーリズムやスリープツーリズムへの関心が高まるなか、宿泊施設には「泊まる場所」から「心身を整える場所」への役割転換が求められている。しかし現実には、睡眠関連商品や健康機器を個別に導入するだけでは、宿泊施設全体の価値向上につながりにくいという課題もある。「アロマエッセ リチュアル」は、入浴から就寝前までを一つの体験として設計した点が特徴だ。シャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュに加え、新たにアウトバスアイテムのピローミストやスリーピングマスクを組み合わせることで、宿泊者の休息時間全体をサポートする構成となっている。

「アロマエッセ リチュアル」
機能性エビデンスを取得したホテル向けアメニティ
さらに特徴的なのが、香りの機能性についてエビデンスを取得していることである。ポーラによれば、精油をブレンドした香りについて、脳波測定、唾液アミラーゼ測定、感性変化測定などを実施し、リラクゼーションに関するデータを取得しているという。ホテル向けアメニティで、ここまで科学的な裏付けを打ち出す例は多くない。また、施設向けにはストレッチ動画やPOP、サステナビリティPRツールなども用意されており、商品だけではなく、「滞在中の過ごし方」まで含めて提案する仕組みになっている。これは、アメニティをモノとして提供するだけでなく、宿泊体験そのものをデザインする発想といえる。同社は、「今後は商品単体ではなく、宿泊施設と共同でモデルルームやウェルネス客室などのフラッグシップ事例を構築し、その価値を実証していくことが重要になる」と話す。

ピローミスト&スリーピングマスクにより さらに美容と眠りのリチュアル空間へ
求められるウェルネス滞在の全体設計
現在、睡眠市場では「スリープツーリズム」という言葉が広がりつつある。しかし、日本ではまだ個別の商品提案が中心であり、「滞在全体を設計する」という段階には十分至っていない。その意味で、「アロマエッセ リチュアル」は、一つのアメニティブランドのリニューアルにとどまらず、ホテルウェルネスの新しい方向性を示す試みとして注目される。今後、大手宿泊施設との共創によるフラッグシップモデルが実現すれば、ウェルネスな滞在を具体的に体験できる場として、宿泊施設の新たな価値創出にもつながる可能性がある。
JWM視点として
ウェルネスツーリズムは、単に宿泊施設に睡眠グッズを集めることではない。入浴、香り、睡眠、美容、食、運動などを一つの滞在体験として設計し、宿泊者の心身を整えることに本質がある。「アロマエッセ リチュアル」は、その入口となる可能性を持つブランドとして、今後の展開を注目したい。
