未病を「医療」だけで考えない時代へ ~幸福学・免疫・食から考える「未病サミット2026」開催

未病を「医療」だけで考えない時代へ

~幸福学・免疫・食から考える「未病サミット2026」開催

「健康は大切だ」と誰もが口にする。しかし、その価値を社会へどう実装するのか――。その問いを共有する場として「未病サミット2026」が開催された。主催した株式会社Well-being INDUSTRYの花高凌氏(代表取締役CEO)は開会あいさつで、「予防や医療の価値は、まだ十分に社会へ伝わっていない」と語った。その上で、「事業者、行政、研究機関などが連携し、日本のヘルスケアを変えていきたい」と開催への思いを説明した。

主催の株式会社Well-being INDUSTRYの花高凌氏(代表取締役CEO)が開会あいさつ

開催テーマは「未病で社会を動かす」

日本は世界有数の長寿国となった一方で、健康寿命の延伸や医療費の増加、生活習慣病の予防など、多くの課題を抱えている。こうした中で近年注目されているのが「未病」という考え方である。病気になってから治療するのではなく、健康と病気の間にある状態に目を向け、生活習慣や食事、運動、睡眠などを通じて健康を維持するという発想だ。しかし、その重要性が語られる一方で、「未病」を社会の仕組みや産業としてどう広げていくかについては、まだ十分な議論が行われているとは言い難い。

だからこそ、多様な専門家が集まり、新たな連携やビジネスのヒントを得る場として、このサミットが企画された。会場には約300人が参加し、23社がブースを出展。企業や研究機関による展示のほか、交流会も開催され、「知識を持ち帰るだけではなく、新しいつながりからヘルスケアを社会実装していく」ことの重要性が繰り返し呼びかけられた。

幸福学から未病を考える

基調講演では、武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司氏が登壇した。前野氏は、WHOが示す健康の定義を紹介しながら、「身体的・精神的・社会的に良好な状態(ウェルビーイング)」という考え方を解説した。その上で、幸福感は単なる気分ではなく、健康や長寿とも深く関係することを幸福学の研究成果をもとに紹介。「幸福学は予防医学そのものである」と語り、身体だけではなく心の状態を整えることも未病を考える上で重要な視点になると述べた。

基調講演では、武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司氏が登壇

「超早期未病」を科学する

続いて、東京大学国際高等研究所研究員・未病制御学講座准教授の安達公裕氏が、「超早期未病」をテーマに講演した。

安達氏は、免疫や腸、炎症反応を可視化する最新の研究を紹介し、病気として診断される以前のごく小さな変化を捉える研究について解説した。また、食を通じて健康を維持する可能性や、ワンヘルスの考え方にも触れ、「農業から医療までを一つの流れとして考える必要がある」と述べ、食と健康、環境を一体的に考える重要性を示した。

未病ビジネスの 23社がブースを出展

JWM視点

今回のサミットで印象的だったのは、「未病」を医療だけの課題として捉えていなかったことである。主催者が掲げたのは、「ヘルスケアを社会へ実装する」という視点だった。そのために幸福学、免疫学、食、企業活動など、異なる分野の専門家が同じ舞台に立ち、「病気になる前」をテーマに議論を交わした。健康づくりは医療機関だけで実現できるものではない。企業の製品やサービス、自治体の取り組み、地域活動、そして一人ひとりの生活習慣が重なり合って初めて、未病という考え方は社会に根付いていく。今回の未病サミットは、一つの学会や研究会ではなく、「未病を社会に実装するには何が必要か」を考える場であった。その意味で、医療、産業、地域をつなぐ新たなプラットフォームとして、今後の展開にも期待したい。