美容の次はウェルネスか――「ビューティガレージ」が描く次の成長戦略

美容の次はウェルネスか――「ビューティガレージ」が描く次の成長戦略

美容業界関係者であれば、「ビューティガレージ」を知らない人は少ないだろう。理美容室・エステサロン・ネイルサロン向け商材のEC販売企業として成長を続け、2026年4月期の連結売上高は381億9700万円と過去最高を更新。会員口座数は75万件規模に達している。

先日、東京・桜新町の本社ショールームを訪問し、同社の事業概要と今後の戦略について話を伺う機会を得た。取材前の筆者の印象は「美容業界向けEC企業」だったが、実際に話を聞くと、そこにはより大きな構想が見えてきた。美容業界の卸売企業から、美容・健康・ウェルネス産業全体を支えるプラットフォーム企業への進化である

中古美容機器販売から始まった24年

ビューティガレージの原点は、中古美容機器の売買にある。創業24年目の同社は、理美容・エステ業界向け商材の販売へと事業を広げ、現在ではグループ会社17社(国内14社、海外3社)を抱える規模に成長した。

事業は「物販事業」「店舗設計事業」「ソリューション事業」の3本柱で構成され、美容商材ECから店舗設計・開業支援・リース・保険・物流・経営支援まで、ワンストップで提供している。特徴的なのは、単なる通販会社ではない点だ。全国9拠点のショールームで対面販売とECを併用し、東2拠点・西1拠点の物流センターから当日17時までの注文であれば最短翌日着の体制を整えている。

顧客層も理美容からエステ・リラクゼーション・ネイル・まつげ・鍼灸へと拡大し、現在の会員口座の内訳はヘア系3割、エステ2割、リラク・ネイル・アイビューティ系各1割となっている。美容クリニックも全体の1.3%、約1万口座弱を占める。担当者は「ほとんどが脱毛系クリニックで、ジェルや使い捨てベッドシーツを購入いただいている。注射針などはまだ取り扱いがなく、そこに可能性があるのではないか」と話す。

こうした顧客基盤の拡張と連動するように、直近の2025年12月には医療機器販売会社をグループ化し「メディカルガレージ」として活動を開始。エステティック市場の停滞を背景に、隣接領域への横展開を一段と加速させている。

なぜ、成熟市場でも成長できるのか

美容業界は人口減少の影響を受けやすい市場だ。理美容室の店舗数は成熟し、エステティック市場も必ずしも順調ではない。担当者自身も「エステ業界は厳しい状況が続いている」と率直に語り、脱毛系をはじめとする大型機器の販売も伸び悩んでいるという。

それでも同社が成長を続けられる背景には、特定商材への依存度が低い事業構造がある。幅広い商材と顧客層を持ち、物販・物流・店舗設計・経営支援という複合的なサービスを組み合わせることで、単一カテゴリの波に左右されにくい収益構造を築いてきた。加えて、市場が飽和しつつある領域から隣接する成長領域へと素早く軸足を移せる機動力も、継続成長の要因として見逃せない。

次の成長領域はウェルネス

今回の取材で最も印象に残ったのは、中期経営計画に示された将来戦略だった。同社が拡大領域として挙げるのは、フィットネス・トレーニングジム、鍼灸院・接骨院、SPA・温浴施設、美容クリニック、審美歯科、動物病院・トリミングなど多岐にわたる。

これはもはや美容業界の単純な横展開ではない。「ウェルネス市場」そのものへの本格進出と見たほうが実態に近い。すでにグループ会社「スパガレージ」を通じてホテルスパ・温浴施設・サウナ設備を専門に取り扱っており、担当者は「もともと美容周りの横展開だったが、それを医療など別のフェーズでさらに横展開している」と説明する。構造的には、既存の物販・物流・店舗設計という強みを新しいバーティカル市場に繰り返し展開していくモデルだ。

ペット領域への言及も印象的だった。トリミングサロンなどは「ターゲットに入るのではないか」としながらも、ペットフードの物流については冷凍・冷蔵対応のコストが課題になるとの見解を示した。一方で、美容関連企業がペットフード市場に参入する動きもあるといい、ヒトの「インナービューティー」需要がペットにも波及しつつある市場変化を感じさせる。

美容産業は、ウェルネス産業へ変わりつつある

今回の取材を通じて感じたのは、美容産業そのものが静かに変容しているという事実だ。かつての美容産業は「髪を整える」「肌を整える」「痩せる」が中心テーマだった。しかし今や「睡眠」「栄養」「運動」「メンタル」「オーラルケア」「温浴」を含む総合的な健康へと消費者の関心は広がり、美容とウェルネスの境界線は急速に溶け始めている。

ビューティガレージの戦略はその潮流と軌を一にしている。美容サロン向けEC企業としてスタートした同社が、フィットネス・スパ・歯科・医療周辺領域へと視野を広げている事実は、業界インフラ企業としての変容を象徴している。中期経営計画では、2029年4月期に売上高620億円超・経常利益40億円規模を目標に掲げる。その達成には、美容市場の深耕だけでなく、健康・予防・ウェルビーイング領域との接点を広げながら新たな市場を取り込む戦略が不可欠だ。物販・物流・店舗設計・経営支援という同社の機能セットが、ウェルネス産業の各領域でどこまで通用するのか。その答えは、これからの数年で明らかになっていくはずだ。

■ JWM視点

美容と健康の融合が進む中で、業界を支えるインフラ企業もまた変化を迫られている。ビューティガレージの事例が示すのは、単一カテゴリの深耕から複数の隣接市場への面的展開へ、という成長モデルの転換だ。美容の次に来るものは何か。ウェルネスか。予防か。健康寿命か。おそらく答えはそのすべてであり、同社はその変化を先取りするように動いている。その挑戦は一企業の成長戦略にとどまらず、日本の美容産業がウェルネス産業へと進化する過程を映し出す、一つの象徴的な事例として注目に値する。