疲労大国ニッポンは変わり始めたのか
日本リカバリー協会「日本の疲労状況2026」から見える新しい健康観
一般社団法人日本リカバリー協会は、全国10万人を対象に実施した「ココロの体力測定2026」の結果を発表した。調査によると、20~79歳の日本人のうち「元気な人」は22.6%。一方で、「疲れている人(高頻度)」39.9%、「疲れている人(低頻度)」37.5%となり、合計77.4%が何らかの疲労を感じていることが分かった。人口換算では約7056万人が疲労を抱えている計算になる。しかし今回の調査では、これまでとは少し異なる変化も見えてきた。

「疲れている」が当たり前の国
調査開始以来、日本人の疲労状態は高止まりしている。2026年の結果でも高頻度疲労者は39.9%。依然として4割近い人が慢性的な疲労状態にある。特に20~40代では半数前後が高頻度の疲労を感じており、20代では54.1%に達した。興味深いのは、高齢層になるほど「元気な人」の割合が増えることである。70代では38.4%が「元気」と回答し、高頻度疲労者は18.4%にとどまった。現役世代ほど疲れているという構図が鮮明に表れている。
女性の疲労は依然深刻
男女別では女性の疲労率が男性を上回った。疲労を感じている人の割合は男性75.7%に対し女性79.1%。特に20~40代女性では高頻度疲労者が50%を超え、30代女性では55.7%という結果となった。仕事、家事、育児、介護など複数の役割を担う世代で疲労が集中している可能性がある。近年、女性の健康課題やフェムテック市場が注目されているが、その背景にはこうした疲労の実態もあると考えられる。
睡眠時間は変わらない
一方で睡眠時間には大きな改善が見られなかった。「6時間以上8時間未満」が50.1%と最も多く、「5時間未満」も20.4%を占める。2025年と比較してもほぼ横ばいであり、日本人の睡眠習慣そのものは大きく変化していない。つまり、「疲れている人」が減ったわけではなく、睡眠時間だけでは疲労問題を説明できない段階に入っているとも言える。

注目は「疲労対策への自己投資」
今回の調査で最も注目したいのはここだ。疲労対策のためにお金を使う人は2026年に32.6%となり、2023年比で1.35倍に増加した。調査では、
- リカバリーウェア
- 睡眠関連サービス
- 温浴
- サウナ
- コンディショニング
- セルフケア用品
などへの支出拡大が背景にあると分析している。これは単なる健康消費の増加ではない。「病気になったら治療する」から、「疲れる前に整える」へ。日本人の健康観が変わり始めている可能性を示している。

一般社団法人日本リカバリー協会 URL:https://www.recovery.or.jp/
JWM視点
「予防」から「回復」へ
これまでヘルスケア産業は、
- 病気の治療
- 健康診断
- 生活習慣病予防
が中心だった。しかし今回の調査から見えてくるのは、
「回復(Recovery)」そのものが市場になりつつある
という変化である。睡眠市場、リカバリー市場、ウェルネスツーリズム、温泉、サウナ、森林浴、リトリートなどは、いずれも「治療」ではなく「回復」を提供する産業と言える。興味深いのは、日本リカバリー協会が掲げる「休養学」が、Jウエルネスが重視してきた「養生」の考え方と重なる点である。日本人は古くから温泉、湯治、季節の食、祭り、自然とのふれあいなどを通じて心身を整えてきた。疲労者が7000万人を超える時代だからこそ、「頑張るための健康」ではなく、「回復するための健康」が求められているのかもしれない。今回の調査は、リカバリー市場の拡大だけでなく、日本社会が「休むことの価値」を再発見し始めている兆候として読むこともできそうだ。
