美容の学びは「化粧品」から「健康」へ
延べ受験者193万人、日本化粧品検定の変遷から見る美容の広がり
化粧品の成分や使い方を知ることから、肌や身体の状態を支える生活習慣を学ぶことへ。日本化粧品検定の学びが広がっている。その変遷には、美容が外見を整えるだけでなく、日々の健康や暮らしにも目を向けるようになった流れが表れている。日本化粧品検定を手がける一般社団法人日本化粧品検定協会の代表理事・小西さやか氏に検定の現在と、美容の学びの変化について聞いた。
取材によると、2026年6月末時点で、日本化粧品検定1~3級の延べ受験者数は193万人を超えた。化粧品や美容の仕事に関わる人の知識習得に加え、生活者が自分のために美容を学ぶ入り口としても、その役割を広げている。
化粧品を「正しく使う」ための学び
2025年4月に新設された準2級(https://cosme-ken.org/pre2ndclass/)は、化粧品の正しい使い方に重点を置く。スキンケア、ヘアケア、メイクアップ、紫外線対策、ボディ・ハンドケア、ネイルケアなど、日常の美容行動に関わる内容を扱い、Webで随時受験できる。美容情報に触れる機会は増えているが、情報を知っていることと、自分に合った方法で実践できることは同じではない。商品を選ぶ際にも、話題性や口コミだけでなく、使う目的や方法を理解することが大切になる。準2級は、そうした日常の疑問に応える学びとして位置づけられる。専門的な成分知識へ進む前に、まず身近な化粧品を適切に使う。その入り口を設けたことは、美容の学びをより多くの生活者へひらく取り組みといえる。
美しさの土台となる生活習慣へ
一方、2級では、美容皮膚科学に加え、睡眠、運動、入浴、食生活などの「生活習慣美容」を扱う。マッサージやツボ、女性の身体についても学ぶ内容に含まれる。小西氏によると、テキストの第3版では、生活習慣美容の内容をより具体化した。例えば、年齢や運動強度に応じた考え方、入浴と睡眠の関係、食生活の捉え方など、日々の行動に結びつけられる説明を充実させている。肌の状態は、肌に何を塗るかだけで決まるものではない。どのように眠り、食べ、身体を動かし、休むか。美容を学ぶうえでも、その土台にある暮らしを見つめる必要がある。
こうした内容は、論文などを参照したうえで、大学教授や専門家が確認する監修体制を取るという。美容と健康の情報が入り交じるなか、学びの範囲を広げると同時に、根拠を確かめることも重視している。
日本化粧品検定の学びの広がりは、美容が扱う領域の変化を映している。化粧品の選び方や使い方から、肌や身体の状態を支える睡眠、運動、食事、入浴へ。外見を整えることに加え、その土台となる日々の暮らしを整えることも、美容の学びに含まれるようになっている。J-Wellness Mediaは、この変遷に、ビューティーとウェルネスが重なり合い、美容の価値が広がっていく流れを見る。
美容情報を、正しく伝える力を育てる
学びの広がりは、情報を受け取る側だけでなく、伝える側にも及んでいる。2026年8月26日には、化粧品広告検定3級が始まった。薬機法に基づく化粧品の効能・効果の範囲などを学び、広告や情報発信で使える表現への理解を深める取り組みである。取材時点では、2級は同年11月の開始を予定し、1級も準備を進めているという。
商品やサービスの魅力を伝えたいという思いがあっても、効果を過大に表現したり、医療的な効能があるように受け取られる説明をしたりすれば、生活者の誤解につながる。美容が健康や生活習慣へ接近するほど、どこまで説明できるのか、何を根拠として伝えるのかが重要になる。知識の習得と、適切な情報発信を支える学びは、広がる美容領域の信頼性を保つための両輪となる。
JWMの視点――美容はウェルネスへの身近な入口になる
美容への関心は、自分の暮らしを見直すきっかけにもなる。肌の調子が気になって睡眠を振り返る。身体の変化を感じて食事や運動を考える。「きれいになりたい」という身近な願いから、日々をより健やかに過ごす行動へつながることがある。日本化粧品検定の変遷は、その接点を学びとして形にしてきた一つの例と捉えられる。ビューティーがウェルネスに置き換わるのではなく、美容が暮らし全体へ視野を広げることで、その価値が深まっていく。
美容事業者にとっても、これは新しい役割を考える手がかりになる。商品や施術を提供するだけでなく、生活者の関心を受け止め、適切なセルフケア情報や、必要に応じて専門家につなぐ。自らの専門領域と限界を理解しながら、日々の暮らしを支える接点になることは可能だろう。検定の広がりを、資格の種類や受験者数の増加だけで見るのではない。そこから、美容が誰の、どのような課題に応えるようになっているのかを読み解くことが、これからのビューティーとウェルネスの事業機会を考えるうえでも重要になる。
取材・文/江渕 敦(J-Wellness Media)
取材協力/日本化粧品検定協会 https://cosme-ken.org/
